こんにちは、garesuです。
「発酵肉」と聞くと、ちょっと意外に感じる方も多いかもしれませんが、実はこの発酵技術は古くから世界各地で利用されてきました。発酵肉は、微生物の力を借りて肉を熟成させることで、保存性を高め、独特の風味や旨みを引き出す食品です。日本でよく知られる「発酵食品」には味噌や醤油、納豆がありますが、肉にも発酵の技術を応用することで、深い味わいや香りを楽しむことができます。
発酵肉の代表的なものには、イタリアのサラミやスペインの生ハム(ハモン・セラーノ)、そしてドイツのソーセージなどが挙げられます。長期間にわたって微生物が肉を発酵させ、熟成されることで、独特の深みのある味わいを持つようになります。また、日本でも、近年発酵技術を取り入れた「発酵ソーセージ」などが注目を集めています。

ドライソーセージ
ドライソーセージは豚や牛の粗挽き肉を塩漬けした後、食塩や香辛料と一緒に腸詰めにして1〜3ヶ月ほど乾燥・熟成させたものです。
JAS法の分類では水分含量35%以下のものをドライソーセージと規定しています。
ドライソーセージは、製造過程で加熱処理をしませんが、乳酸発酵によるpHの低下と塩分によって腐敗菌の増殖を抑え、長期保存が可能となります。
かつては、乾燥・熟成中に自然発生した乳酸菌で発酵させていましたが、現在では人工的に培養した乳酸菌などの種菌を使うのが一般的です。
サラミ
サラミは、ヨーロッパを中心に古くから愛されている発酵肉製品の一つで、主に豚肉や牛肉を使用して作られます。独特の風味と長期間保存ができることから、世界中で親しまれています特にイタリアが有名ですが、スペインやフランスなどでもさまざまな種類のサラミが作られています。

サラミの製造過程
サラミは、基本的には肉と脂肪をミンチ状にし、塩やスパイスを加えて腸詰めにした後、発酵・熟成させて作ります。
- 肉の準備と混合
主に豚肉や牛肉が使われ、これに細かく刻んだ脂肪を加えます。 - 肉と脂肪のバランスは製品ごとに異なりますが、サラミの風味や食感を左右する重要なポイントです。
- スパイスとしては、塩、黒コショウ、ガーリック、パプリカなどが使用され、製品ごとに異なる独特の風味が生まれます。
- 発酵
肉を腸詰めにした後、低温で発酵させます。この発酵過程では、乳酸菌などが糖分を分解し、乳酸を生成することで、独特の酸味が生まれ、同時に保存性も向上します。 - 乾燥・熟成
発酵の後、サラミはさらに乾燥させます。この段階で水分が抜け、肉が締まり、旨味が凝縮されます。熟成期間は製品によって異なり、数週間から数か月にわたることもあります。長い熟成期間を経たサラミほど、風味が複雑で深くなる傾向があります。
サラミの魅力
- 風味豊かな味わい
サラミは、発酵と熟成により深い風味を持っています。 - スパイスや肉の旨味が凝縮されており、そのまま食べても美味しいですし、チーズやパンと合わせると一層おいしく楽しめます。
- 保存性の高さ
サラミは乾燥されているため、冷蔵庫がなかった時代でも長期間保存できる食品として重宝されました。現在でも、適切な環境で保存すれば数か月にわたって楽しむことができます。 - 多様な食べ方
サラミはそのままスライスして食べる以外にも、さまざまな料理に活用できます。 - ピザのトッピングやサンドイッチの具材としてはもちろん、パスタやサラダにも加えることができます。
- 特に、ワインやビールとの相性が良く、パーティーのアペタイザーやおつまみとしても最適です。

サラミの栄養価と注意点
サラミは栄養豊富な食品ですが、塩分と脂肪分が多いため、食べ過ぎには注意が必要です。
- タンパク質
サラミは高タンパク質食品で、筋肉を維持・成長させるために役立ちます。 - ビタミンB群
発酵肉には、特にビタミンB12やナイアシンが豊富に含まれており、エネルギー代謝を助けます。
ただし、塩分が多いため、特に高血圧の方や塩分制限が必要な方は、適量を心がけることが大切です。
白カビサラミ
白カビサラミは、サラミの表面に白いカビが生えた独特のタイプの発酵ソーセージです。
この白黴は、熟成過程で自然に形成されるもので、サラミの風味や保存性に大きな影響を与えます。
見た目の特徴から「白カビサラミ」とも呼ばれ、そのリッチな味わいと豊かな香りで多くの人に愛されています。
白カビサラミの特徴
白カビサラミの最大の特徴は、サラミの外側に見られる白いカビです。
この白カビは食用で、サラミを熟成させる過程で自然に生えたり、専用のカビを利用して管理された環境で育成されたりします。このカビには、風味を整えると同時に、保存性を向上させる役割があります。
- 風味の深さ
白カビはサラミの表面を覆うことで、内部の水分が均等に減少するのを助け、サラミの熟成が進むにつれて肉の旨味を引き出します。 - さらに、熟成中にカビが発酵プロセスを調整し、サラミに複雑で芳醇な風味をもたらします。
- 保存性の向上
白カビは、サラミの表面にバリアのような役割を果たし、有害な雑菌の侵入を防ぐことで、サラミの品質を長期間維持する手助けをします。これにより、冷蔵技術が乏しかった昔でも、長期間保存できる食品として愛されてきました。
白カビサラミの製造過程
白カビサラミは、通常のサラミと同様に、肉を塩やスパイスで味付けして腸詰めにし、発酵・熟成させますが、ここに白カビの生成が加わります。
- 材料の準備と混合
基本的には、豚肉や牛肉などを細かく挽き、塩、黒コショウ、ガーリックなどのスパイスを加えます。 - これを腸詰めにしてサラミの形を作ります。
- 発酵
サラミを低温の環境で発酵させます。乳酸菌などが糖を分解し、酸を生成することで、サラミに独特の酸味と風味が生まれます。 - 発酵が進む中で、白黴の生成が促されます。
- 白カビの形成
発酵が進んだ後、サラミは専用の部屋でさらに熟成されます。 - この熟成室には、特定のカビ菌(Penicillium属のカビ)が使用され、サラミの表面に白いカビが付着し、増殖していきます。
- このカビは、発酵と熟成の過程をコントロールし、サラミに特有の香りや味を加えます。
- 熟成・乾燥
熟成が進む中で、カビがサラミの外側を覆い、肉の内部の水分が徐々に抜けていきます。 - これにより、肉の旨味が凝縮され、白黴の風味がサラミ全体に行き渡ります。
- 熟成期間は数週間から数か月に及ぶことが多く、長期熟成されたものほど、風味が深く複雑になります。
白カビサラミの食べ方
白カビサラミは、そのままスライスして食べるのが一般的です。
薄く切ることで、白黴の香りとサラミの旨味を最大限に楽しむことができます。
また、カビを取り除かずにそのまま食べることで、カビ特有の風味も一緒に味わうことができます。
- 前菜やおつまみとして
チーズやワイン、クラッカーと一緒に楽しむのが定番です。特に赤ワインやスパークリングワインとの相性が抜群で、味わい深い白黴サラミの風味を引き立ててくれます。 - サンドイッチやピザの具材として
白カビサラミは、パンに挟んでサンドイッチにしたり、ピザのトッピングとしても利用できます。特に、温めることでさらに香りが引き立ち、風味が増します。

白カビサラミの健康面での注意点
白カビサラミは、発酵食品であり、栄養価も高いですが、いくつかの注意点もあります。
- 塩分
保存性を高めるために、塩分が多く含まれています。そのため、高血圧の方や塩分制限が必要な方は、適量を守ることが大切です。 - 脂肪分
サラミには、特に脂肪分が多く含まれることがあり、カロリーも比較的高い食品です。バランスの良い食事を心がけ、サラミの摂取量を調整してくださいね。
セミドライソーセージ
ドライソーセージよりも乾燥・熟成期間が短く、水分を多く含むものをセミドライソーセージとよびます。
JAS法では、水分含量55%以下のものをセミドライソーセージと規定しています。
ドライソーセージに比べると保存性は低く、製造過程で加熱処理を施すのが一般的です。
セミドライソーセージの代表的なものとして、スペインのチョリソーや、ドイツが発祥といわれるセルベラートなどがあります。
チョリソー

スペインやラテンアメリカで広く親しまれているスパイシーなソーセージで、主に豚肉を使用した発酵肉製品の一種です。
パプリカやガーリック、スパイスがたっぷりと加えられたチョリソーは、その独特な風味と色鮮やかな見た目が特徴です。
スペイン発祥のチョリソーは地域によって多種多様なスタイルが存在し、調理法や味わいもさまざまです。
チョリソーの起源と歴史
チョリソーはスペインで生まれたソーセージですが、現在ではラテンアメリカ各国でも多くのバリエーションが存在しています。
スペインのチョリソーの起源は中世まで遡り、肉を保存するために塩やスパイスで風味付けし、乾燥させる技術が発展しました。大航海時代にはスペインから南米に伝わり、そこからさらに各国で独自のスタイルが発展しました。
特にスペインのチョリソーは、使用するパプリカが特徴的で、これがチョリソー独特の赤い色を与えています。また、スペインの気候は乾燥に適しており、チョリソーの発酵・熟成には最適な環境でした。
チョリソーの種類
チョリソーには、大きく分けてスペイン風とメキシコ風の2つのスタイルがあります。それぞれ風味や食べ方が異なります。
- スペイン風チョリソー
スペインのチョリソーは、乾燥させた発酵ソーセージで、そのままスライスして食べることができるのが一般的です。
パプリカ(特に甘いタイプの「パプリカ・デ・ラ・ベーラ」)が加えられ、赤い色をしています。風味はガーリックやハーブが効いており、辛口と甘口のバリエーションがあります。- ドライ・チョリソー: 完全に乾燥させたもので、硬く、噛み応えがあり、保存性も高いです。スライスしてそのまま食べたり、前菜やおつまみとして楽しむことが多いです。
- セミドライ・チョリソー: 柔らかめで、少し加熱して食べることが一般的です。例えば、煮込み料理に加えたり、焼いて食べたりします。
- メキシコ風チョリソー
メキシコのチョリソーは、生ソーセージで、スペインの乾燥タイプとは異なり、調理してから食べます。
豚肉や牛肉に唐辛子、ビネガー、さまざまなスパイスを加えて作られ、非常にスパイシーな味わいが特徴です。メキシコ料理では、タコスやトルティーヤ、卵料理などに使われます。- 生タイプ: 加熱調理が必要で、炒めたり焼いたりして料理に使います。特にメキシコでは、タコスの具材やスクランブルエッグと一緒に炒めるのが一般的です。
セルべラート
主にスイスやドイツで広く食べられている伝統的なソーセージの一種です。
セルベラートは、豚肉や牛肉を細かく挽いて作られ、スパイスやハーブで風味を加えた後、軽く燻製されることが多いです。
その食感は柔らかく、味わいは比較的マイルドで、日本でよく見かけるウインナーソーセージとも似た食感を持っていますが、風味や製法には独自の特徴があります。

セルベラートの歴史と起源
「セルベラート」という名前は、ラテン語の「cerebellum(脳)」に由来しており、かつてはソーセージの材料として動物の脳を使用していたことに由来しています。
しかし、現代のセルベラートには脳は使用されておらず、主に豚肉や牛肉、ベーコン、脂肪が使われています。
スイスでのセルベラートの歴史は特に長く、スイスの国民的ソーセージとも言われる存在です。
18世紀ごろには、すでにスイス各地で生産されており、現代ではスイスの文化や食生活の中で欠かせないものとなっています。
セルベラートの魅力
- マイルドで豊かな風味
セルベラートは比較的マイルドな風味を持っており、燻製による香ばしさとスパイスのバランスが絶妙です。
日本のウインナーソーセージに似ていますが、より本格的で奥深い味わいが楽しめます。 - 食感の良さ
豚肉と脂肪のバランスが良く、柔らかくジューシーな食感が特徴です。
特に焼いた時の外側のカリッとした食感と中のジューシーさのコントラストが非常に美味しいです。 - 手軽に楽しめるソーセージ
セルベラートはそのまま食べることができる上、焼いたり茹でたりして簡単に調理できるため、非常に手軽に楽しめます。
ピクニックやバーベキュー、または簡単な夕食のおかずとしても活躍します。 - バリエーションが豊富
地域ごとに微妙に異なるセルベラートがあり、スイス、ドイツ、オーストリアなどでそれぞれ異なるスタイルのセルベラートを楽しむことができます。
スパイスの配合や燻製方法によって異なる風味を試すのも一つの楽しみです。

いかがでしたか?
長めになりました‥‥もう少しだけ続きます。
さまざまな種類の発酵肉を試して、その美味しさを楽しんでくださいね。
参考文献
「発酵食品ソムリエ講座テキスト1 伝統的な和食と日本の発酵文化」U-CAN
「発酵食品ソムリエ講座テキスト2 世界にひろがる発酵食品と健康」U-CAN
「発酵食品を楽しむ教科書」 ナツメ社