こんにちは、garesuです。
前回の続きになります。今回は魚の糠漬けのつくり方をお伝えしますね。
糠漬けといえば、キュウリやかぶ、大根など野菜を漬け込むのが一般的ですが魚を漬け込むこともあります。
文献によると、鎌倉時代には魚の糠漬けがつくられていたと考えられています。

魚の糠漬け(ぬか漬け)は、魚を糠(米ぬか)に漬け込んで発酵させた日本の伝統的な保存食品です。
米ぬかには発酵に必要な栄養素が豊富に含まれており、乳酸菌や酵母菌が働いて魚に独特の風味を与えます。
糠漬けは、魚を長期間保存するための技法として発展し、また独特の旨味と香りが楽しめる発酵食品として親しまれています。
魚の糠漬けの作り方
魚の糠漬けの作り方
材料
- 魚: アジ、サバ、イワシ、サケなど、油ののった魚が一般的に使われます。
- 米ぬか: 新鮮な米ぬかを用意します。
- 塩: 魚の下ごしらえに使用します。また、糠床にも塩を加えます。
- 酒かす(オプション): 風味を豊かにするために使うこともあります。
- 昆布、唐辛子、ニンニクなど(オプション): 糠床に加えて風味をプラスします。

手順
魚の下処理
- 魚をさばく: 魚をきれいに洗い、内臓を取り除きます。大きな魚は切り身にしますが、小魚はそのまま使うことも可能です。
- 塩漬け: 魚全体にしっかりと塩をまぶし、冷蔵庫で一晩から数日間、塩漬けにします。この工程で魚の余分な水分を抜き、保存性を高めます。塩漬けする時間は、魚の大きさや種類によって異なりますが、12~24時間程度が目安です。
糠床の準備
糠床は米ぬかをベースにした発酵床で、これが魚を漬け込む際の発酵環境を提供します。
- 米ぬかを炒る(必要に応じて): 糠の風味を引き立てるため、米ぬかを軽く乾煎りすることがあります。ただし、新鮮な糠をそのまま使っても構いません。
- 米ぬかに塩を加える: 米ぬかに塩を加えて混ぜます。おおよその目安として、米ぬかの重量に対して5~10%程度の塩を加えます。
- 水分を加える: 糠床が適度に湿った状態になるように、水や昆布出汁などを加えます。ベタつかず、手で握ると固まり、軽く崩れるくらいの状態が理想です。
- 風味を加える: 昆布、唐辛子、ニンニクなどを加えて風味をつけることもあります。これにより、糠床の風味が豊かになり、魚にもその味わいが染み込みます。
魚を糠床に漬け込む
- 塩抜き: 魚を塩漬けから取り出し、表面の塩を水で軽く洗い流してから、ペーパータオルなどでしっかりと水気を取ります。
- 糠床に漬け込む: 魚を糠床に埋め込むように漬け込みます。魚全体が糠にしっかりと覆われるようにしてください。
発酵させる
- 漬け込み時間: 冷蔵庫などの低温環境で、数日から1週間程度発酵させます。発酵期間は魚の種類や大きさ、また糠床の状態によって変わります。発酵が進むと、糠床の乳酸菌が魚に酸味と旨味を加え、独特の風味が生まれます。
- 糠床の管理: 漬け込んでいる間、糠床が乾燥しないように注意し、必要に応じて水分を足します。また、糠床が均一に発酵するように定期的にかき混ぜることが大切です。
取り出して調理
- 魚を取り出す: 漬け込みが完了したら、魚を糠床から取り出し、表面に付着している糠を軽く拭き取ります。
- 調理: 魚はそのまま焼くことが一般的です。網で焼いたり、フライパンで焼いたりして食べます。糠漬けの魚はすでに味がついているため、追加の塩や調味料は必要ありません。糠の香ばしい風味と発酵による深い旨味が特徴的です。
魚の糠漬けの特徴と効果
保存性の向上
糠漬けは魚を長期間保存するための伝統的な方法です。塩漬けと発酵の相乗効果によって、魚は保存性が高まり、冷蔵保存であれば数週間、冷凍保存であればさらに長期間保存可能です。糠漬けは、冷蔵技術が発達する前の保存食としても重要な役割を果たしていました。
発酵による旨味の増加
発酵食品である糠漬けでは、米ぬかの発酵過程で魚のタンパク質が分解され、アミノ酸やペプチドに変わります。これにより、旨味成分が増え、魚の味わいが一層深まります。また、乳酸菌の働きによって酸味が加わり、複雑で豊かな風味が楽しめます。
栄養価の向上
糠漬けは、栄養価の高い米ぬかの成分を魚に染み込ませることで、ビタミンやミネラルの摂取量が増加します。特に、米ぬかにはビタミンB群や食物繊維が豊富に含まれており、これが魚に移行することで、健康に良い効果が期待されます。
腸内環境の改善
糠漬けに含まれる乳酸菌や酵母菌は、腸内環境を整える働きがあります。これにより、消化機能の向上や便通の改善、免疫力の強化が期待されます。発酵食品の摂取は、腸内の善玉菌を増やし、腸内フローラのバランスを整えることができます。
魚の糠漬けは、伝統的な保存食としての役割だけでなく、発酵食品としての栄養や健康効果が期待できる食品です。発酵によって深みのある旨味と酸味が生まれ、栄養価も向上します。米ぬかを使った発酵食品は日本の伝統文化の一つであり、魚の糠漬けもその一部として現代でも愛されています。
魚の糠漬けのおいしさ
魚の糠漬けの「おいしさ」は、発酵による独特な深い風味と、米ぬかがもたらす豊かな旨味が特徴です。
発酵による旨味の増加
魚の糠漬けの一番の魅力は、発酵の過程で魚が旨味成分を増すことです。糠漬けに使われる魚は、糠床の中で乳酸菌や酵母などの微生物によって発酵し、魚のタンパク質が分解されてアミノ酸やペプチドが生成されます。これにより、魚の旨味が通常の状態よりも豊かになり、風味が深まります。
特に、グルタミン酸などの旨味成分が多く含まれ、これが「発酵食品ならではのコク」として口の中に広がります。糠の発酵と魚の風味が合わさって、生まれる独特な味わいが楽しめます。
米ぬかの香ばしさ
糠漬けには米ぬかが使われますが、米ぬか自体が持つ香ばしい風味が、魚にも移ります。特に、魚の糠漬けを焼くと、米ぬかに含まれる油分が焼けることで香ばしい香りが広がり、食欲をそそります。この香りは焼き魚の通常の香ばしさとは異なり、独特の深い風味を生み出します。
また、焼くことで表面の糠がカリッとした食感を生むため、外側は香ばしく、内側はしっとりした魚の食感のコントラストも楽しめます。
発酵による酸味と旨味のバランス
糠漬けは、乳酸菌の働きにより魚にほのかな酸味が加わります。この酸味が魚の旨味を引き立て、風味のバランスを整えます。酸味が加わることで、魚の脂っこさが軽減され、さっぱりとした味わいになります。特に、油ののった魚を糠漬けにすると、脂の甘みと発酵による酸味が絶妙なハーモニーを生み出します。
酸味が魚の脂を抑え、食べたときに軽やかな印象を与えるため、濃厚な風味を持ちながらも後味がさっぱりとしているのが特徴です。このバランスが、糠漬けの魅力の一つです。
塩味の調和
魚の糠漬けは、塩漬けの工程が含まれるため、適度な塩味がついています。この塩味は発酵による旨味や酸味と相まって、味のバランスが整います。米ぬかによって塩味がまろやかになるため、過度に塩辛くなく、魚本来の味わいを損なわずに引き立てます。
また、糠漬けは長期保存が可能なため、適度な塩分が加わり、魚の腐敗を防ぎつつ、旨味を閉じ込めます。焼いたり蒸したりすることで、塩味がさらに馴染み、ちょうど良い味付けになります。
魚の食感の変化
糠漬けにすることで、魚の身が締まり、食感がしっかりとしたものになります。特に、長時間漬け込むと、魚の水分が抜けて食感が硬めになりますが、その分、旨味が凝縮されます。しっかりとした食感と旨味が詰まった魚は、噛むたびに味が広がり、満足感があります。
また、短期間漬け込んだ場合は、しっとりとした柔らかな食感が楽しめます。この柔らかい食感と糠漬け特有の風味が融合し、より繊細な味わいが感じられます。
糠の風味が魚を包む
糠床に漬け込むことで、米ぬかの風味が魚に移り、糠独特の甘さや香りが感じられるようになります。米ぬかは、魚の風味を損なうことなく、さらに豊かにする効果があります。糠漬け特有の「発酵による香ばしい風味」が魚の味わいと絶妙にマッチし、食べるたびに新しい風味が楽しめるのです。
糠自体に含まれるビタミンB群やミネラルが発酵過程で魚に移ることで、栄養的にも優れた食品となります。糠漬け魚の「健康に良いおいしさ」もこの風味の一部といえるでしょう。
焼き魚や揚げ物としての楽しみ方
糠漬けの魚は、焼いたり揚げたりして食べることが一般的です。焼くことで糠の香ばしさが引き立ち、旨味がさらに濃縮されます。特に皮の部分はパリッと香ばしく、中の身はしっとりとした食感を楽しむことができます。揚げ物にすると、糠漬けの風味が脂と絡み合い、よりリッチな味わいが楽しめます。
また、糠漬けはそのまま食べるだけでなく、調味料や薬味と一緒に楽しむこともできます。大根おろしや醤油を少量添えると、味に変化が加わり、さらに深い味わいを引き出します。
いかがでしたか?
魚の糠漬けのおいしさは、発酵によって生まれる旨味の深さ、酸味と塩味の絶妙なバランス、そして米ぬかの香ばしい風味が特徴です。
糠漬けの発酵過程で魚のタンパク質が分解され、複雑な味わいが生まれます。さらに、魚の食感がしっかりと締まり、噛むたびに旨味が広がるのも魅力です。
糠漬けの魚は、そのまま焼いたり揚げたりするだけで、簡単に深い味わいを楽しめるため、日本の伝統的な保存食でありながら、現代の食卓でも人気があります。
糠漬けならではの風味を活かした調理法で、家庭でも気軽に楽しむことができる「おいしさの詰まった一品」です。
