こんにちは、garesuです。
発酵食品は麹以外の微生物を利用したものも、たくさんあります!
納豆についてお伝えしますね。

納豆の種類
大豆の発酵食品の納豆は大きく分けて2種類あります。
1、糸引き納豆・・・ネバネバと糸を引く
2、塩辛納豆 ・・・糸を引かず塩分がある
それぞれ発酵菌や製法が違い独特の味や形状に仕上がります。
納豆の原点は塩辛納豆です。
塩辛(しおから)納豆
起源は、奈良時代に中国から伝わりました。
中国から伝わったので唐(から)納豆、京都の大徳寺などお寺で作られることが多かったため寺納豆とも呼ばれています。
塩辛納豆は納豆菌による発酵食品ではありません。
麹菌と塩水で大豆を発酵させたものです。
塩辛納豆の特徴は塩気が強く、溜醤油や八丁味噌に似た風味です。
また、塩辛納豆の誕生背景として、秋田地方は雪深い地域であり、冬場の食料保存が重要だったため、塩と発酵技術を活かした保存食が発達したことが挙げられます。また、秋田県は発酵食品文化が豊かで、味噌や漬物なども多く作られてきた地域です。こうした食文化の中で、塩辛納豆が自然と生まれ、地域の人々に親しまれるようになりました。
今日でも、秋田県の特産品として知られており、伝統的な食材や調味料として家庭料理に使われるほか、お土産としても人気があります。
糸引き納豆
糸引き納豆が誕生した時期は明らかではありません。
稲作が盛んな日本には昔から多くの稲藁(いなわら)があり、稲藁の中に大豆を保管したときにその稲藁に付着する納豆菌の働きで偶然糸引き納豆ができたのではないかと考えられています。
糸引き納豆が文献に記されているのは室町時代の精進魚類物語でさまざまな食品を擬人化して描いた物語の中に納豆太郎糸重(なっとうたろういとしげ)という人物が登場します。
江戸時代になると納豆は庶民の間にも広まり、振売(ふりうり)とよばれる商人が朝早くから納豆を売り歩いていました。
その頃から朝はご飯に納豆、味噌汁という日本の定番の発酵食品が定着していたことがわかりますね。

振売とは‥
商品の入ったかごをつけた天秤棒を肩に担いで、豆腐や魚などを売り歩いた行商人。
棒手振(ぼうてふり)ともいいます。
当時の納豆はゆでた大豆を稲藁で包み天然の納豆菌で発酵させる藁苞(わらづと)納豆というもので品質が安定しませんでした。
大正時代になってから純粋培養した納豆菌を清潔な容器の中で培養する方法を発見し良質の納豆を大量生産し安定的に販売ができるようになりました。
納豆の原料
基本的な原料: 納豆の原料として最も重要なのは大豆です。納豆に使用される大豆は、発酵しやすいように選ばれ、一般的には小粒や中粒のものが使用されます。特に小粒大豆は、発酵が進みやすく、糸を引きやすいため、納豆作りに適しています。
糸引き納豆に必要な納豆菌
糸引き納豆の発酵に欠かせない納豆菌は、稲藁に多く生息する枯草菌(こそうきん)の一種。
粘着物質をつくり出し、高温、低温、乾燥に耐えられる強い生命力を持っています。
現在は稲藁の納豆菌ではなく、菌の力が強い純粋培養の種菌が使われているのが一般的です。
代表的な種菌は宮城野菌、高橋菌、成瀬菌などです。
大手の納豆メーカーは独自の菌が使われています。
納豆の製造工程
糸引き納豆の製造工程は、主に大豆の準備、納豆菌の接種、発酵、そして熟成というプロセスを経て進められます。
糸引き納豆
1. 大豆の浸水
目的: 大豆を柔らかくし、発酵しやすくするための重要な工程です。
手順: 大豆を十分な水に浸し、8~20時間かけて吸水させます。大豆の種類や季節によって時間は調整されます。吸水後の大豆は元の2倍ほどの大きさになります。
2. 大豆の蒸し(または煮る)
目的: 大豆を柔らかくし、納豆菌が浸透しやすい状態にするため。
手順: 浸水した大豆を蒸します。蒸し時間は1.5~3時間程度ですが、適度に柔らかくなるまで続けます。大豆がしっかり蒸し上がることで、納豆菌が効率よく大豆に付着して発酵が進みます。
※家庭で作る場合は、鍋で煮ることも可能です。
3. 納豆菌の接種
目的: 大豆に納豆菌を加え、発酵を開始させるため。
手順: 蒸し上がった大豆を少し冷まして40°C前後にします。次に、培養された納豆菌を蒸した大豆に均一に混ぜます。納豆菌は市販されているものを使うか、既製の納豆を少量混ぜることでも代用できます。
4. 発酵
目的: 納豆菌が活発に増殖し、大豆を発酵させる工程です。
手順: 納豆菌を接種した大豆を、約40°C前後の温度で20~24時間発酵させます。この温度は納豆菌が最も活発に働くため、糸引きと独特の香りが生成されます。発酵中の湿度管理も重要で、乾燥しすぎないようにします。
発酵環境: 工場では発酵室を使って温度・湿度を管理しますが、家庭ではヨーグルトメーカーや発泡スチロール箱に湯たんぽを入れる方法などが使えます。
5. 熟成
目的: 発酵が終わった納豆を冷却して、風味を落ち着かせます。
手順: 発酵が終わった後、納豆を冷蔵庫に入れて1~2日間熟成させます。この工程で納豆の風味が整い、より深い味わいが生まれます。熟成が進むことで、納豆の香りや粘りが増すことがあります。
6. 包装と保存
目的: 食べやすく、保存できる状態に整えます。
手順: 発酵と熟成が完了した納豆を適量ずつパックに分け、密封して冷蔵保存します。家庭で作る場合は、ラップや保存容器に入れて保存可能です。冷蔵で1週間ほど保存でき、冷凍保存すれば1か月以上持ちます。
製造工程のポイント
温度管理: 発酵温度が高すぎると、納豆菌が死滅したり品質が劣化することがあります。逆に低すぎると、発酵が遅くなり風味が損なわれることがあります。
発酵時間: 24時間が一般的な目安ですが、長すぎるとアンモニア臭が強くなることがあります。
湿度管理: 乾燥を防ぐために、大豆が乾かないよう湿度を保つことが重要です。
発酵後の納豆の特徴
糸引き: 納豆菌が生成するポリグルタミン酸によって粘りが生まれ、納豆が糸を引く独特の食感を楽しめます。
香り: 発酵による独特の匂いが強くなりますが、これが納豆の風味を形作ります。
栄養価: 発酵によってビタミンK2やナットウキナーゼが生成され、健康効果が高まります。
糸引き納豆は、日本の伝統的な発酵食品であり、その製造過程では微生物の働きを活かして大豆の栄養を最大限に引き出しています。

塩辛納豆 (大徳寺納豆)
塩辛納豆の製造工程は、通常の糸引き納豆と異なり、麹と塩を使用して発酵させるのが特徴です。
1. 大豆の浸水
目的: 大豆を柔らかくし、発酵に適した状態にするため。
手順: 大豆を一晩(約8〜12時間)水に浸して吸水させます。大豆が水を吸収し、2倍程度の大きさになります。
2. 大豆の蒸し(または煮る)
目的: 大豆を柔らかくして、発酵を促進させるため。
手順: 浸水した大豆を蒸すか、鍋で柔らかくなるまで煮ます。この工程は、通常1.5〜3時間程度かかります。大豆が十分に柔らかくなることで、麹や塩が大豆にしっかり浸透します。
3. 冷却
目的: 蒸した大豆を発酵温度まで下げるため。
手順: 蒸し上がった大豆を40°C前後まで冷まします。発酵の準備をするため、温度が高すぎると麹菌や納豆菌が死んでしまうため注意が必要です。
4. 麹と塩の混合
目的: 大豆に麹菌と塩を加えて、発酵と保存性を高めるため。
手順: 冷ました大豆に、あらかじめ作っておいた米麹を加えます。塩を大豆の重量の約10%ほど加えることが一般的で、これが保存性を高めます。麹菌の働きにより、発酵が進み、旨味が増します。
5. 発酵
目的: 麹菌の作用で大豆を発酵させ、塩辛納豆の風味を形成するため。
手順: 塩と麹を混ぜた大豆を容器に詰め、常温で発酵させます。発酵温度は20~30°Cが適温で、2週間から1か月程度かけてじっくり発酵させます。発酵期間が長いほど、濃厚な旨味が出てきます。発酵管理: 時々容器を開けて様子を確認し、適度に混ぜて発酵が均一に進むようにします。
6. 熟成
目的: 発酵が終わった後、さらに風味を安定させるための工程です。
手順: 発酵が終わった塩辛納豆を冷暗所や冷蔵庫で1〜2か月間熟成させます。熟成期間中に、風味がさらにまろやかになり、独特の旨味と香りが増します。
7. 包装と保存
目的: 保存性を高め、風味を保持するため。
手順: 熟成後の塩辛納豆を、瓶や保存容器に詰め、密閉します。塩が多めに使われているため、冷蔵庫で保存すると数か月にわたり保存が可能です。塩辛納豆は発酵が進むほど風味が強くなるので、保存期間に応じて味わいが変わります。
塩辛納豆の特徴
食感: 粘りがなく、しっとりとした食感。
風味: 麹と塩による深い発酵の風味が特徴で、濃厚な旨味が楽しめます。通常の納豆よりも塩味が強く、発酵の進み具合によって風味が異なります。
保存性: 塩と発酵によって保存性が高まり、冷蔵庫で長期間保存可能です。
塩辛納豆の使い方
塩辛納豆は、そのままご飯にのせたり、野菜や豆腐と和えたりするほか、調味料としても使われます。日本酒や焼酎との相性が良く、酒の肴としても親しまれています。また、味噌の代わりに料理に使用することもあり、和食の幅広い料理に応用されています。
このように、塩辛納豆は大豆、塩、麹というシンプルな材料を使い、発酵と熟成によって深い風味と保存性を持つ食品に仕上がります。伝統的な発酵食品として、秋田地方をはじめとする東北地方の食文化に根付いています。

いかがでしたか?
次回は納豆のおいしさや、効果をお伝えしますね。