こんにちは、garesuです。
生ハム」と聞くと、イタリア料理やスペイン料理の前菜を思い浮かべるでしょう。
生ハムは、長期間の熟成を経て作られる「発酵肉」の一種です。

生ハム
生ハムは涼しく乾燥したヨーロッパの山岳地帯で生まれた保存食です。
豚のもも肉を塩漬けにして、乾燥・熟成させたものです。
基本的には製造過程で加熱処理を行わない発酵肉です。
熟成期間は短くても数ヶ月、長いものでは数年にもおよびます。
熟成期間中にカビや乳酸菌などの作用でうま味や風味が醸成されるため、熟成期間の長いものほど珍重されます。
ヨーロッパの生ハム
ヨーロッパの生ハムは、地域ごとに異なる伝統と風味を持つ魅力的な食文化の一部です。
イタリアやスペインを中心に、さまざまな種類の生ハムが世界中で楽しまれていますが、それぞれに独自の特徴と製法があります。

イタリアの生ハム
イタリアの生ハムは「プロシュット」として知られています。
特に有名なのが「プロシュット・ディ・パルマ(Parma)」と「プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ(San Daniele)」です。
プロシュット・ディ・サン・ダニエーレ
サン・ダニエーレはフリウリ地方で作られ、パルマ産と並び称される高級生ハムです。
塩の使用量が少ないため、非常に繊細でまろやかな味わいが楽しめます。
独特の甘さと熟成による旨みが特徴的で、パルマ産よりもややしっとりした食感があります。
プロシュット・ディ・パルマ
パルマ地方で生産されるこの生ハムは、豚の後脚を使い、塩だけで熟成させる伝統的な製法が特徴です。
保存料や添加物を使わず、自然のままの発酵で約12〜36ヶ月の熟成を行います。
結果として、甘みのある風味と柔らかい口当たりが特徴です。

スペインの生ハム
スペインの生ハムは「ハモン(Jamón)」と呼ばれ、地域によってさまざまな種類があります。
中でも特に有名なのが「ハモン・セラーノ(Jamón Serrano)」と「ハモン・イベリコ(Jamón Ibérico)」です。
ハモン・イベリコ
「イベリコ豚」というスペイン特有の黒豚を使って作られるこの生ハムは、脂肪分が多く、その濃厚で豊かな味わいが特徴です。
特に「ベジョータ(Bellota)」と呼ばれる最高級品は、イベリコ豚がどんぐりを食べて育つことで、ナッツのような風味とジューシーな食感が得られます。
熟成期間も非常に長く、通常24〜48ヶ月以上かけてじっくりと発酵させます。
ハモン・セラーノ
「セラーノ」は山岳地方(セラーノ=山の意味)で作られる生ハムで、白豚を使って製造されます。
塩漬けにした後、乾燥した空気でゆっくりと熟成させ、しっかりとした味わいと軽い塩気が特徴です。
一般的には12〜18ヶ月の熟成期間を経て、スライスして食べます。
中国の生ハム
中国にも、長い歴史を持つ伝統的な「生ハム」が存在します。特に有名なのが「金華火腿(キンカホイテイ)」です。
中国浙江省の金華市を中心に生産されており、その歴史は数百年にもわたります。金華火腿は、中国料理に欠かせない高級食材として広く使われており、その独特の風味と保存性の高さから重宝されています。
金華火腿(キンカホイテイ)
金華火腿は、豚の後脚を使用して作られ、塩漬けした後、長期間にわたって乾燥・熟成させることで生まれる伝統的な発酵肉です。
特に深い塩味と旨味が特徴で、見た目は赤みがかった色合いで脂肪部分が少ないのが特徴です。
その豊かな風味と食感から、中国料理のだしやスープ、炒め物、蒸し料理など、さまざまな料理に用いられています。
金華火腿はスペインのハモン・セラーノ、イタリアのプロシュート・ディパルマと並んで、世界三大ハムの一つに数えられています。
製法と特徴
金華火腿の製造工程
- 塩漬け:豚の後脚にたっぷりと塩をすり込み、寒冷な冬の季節に塩漬けにします。この塩漬け工程が風味を決める重要なプロセスで、通常約1〜2ヶ月かけて行われます。
- 乾燥と熟成:塩漬けされたハムは、乾燥させるために吊るして風通しの良い場所で保存します。この間に、気温や湿度によって肉がゆっくりと発酵し、風味が熟成されます。この工程には通常6〜12ヶ月以上かかり、長ければ数年にわたって熟成させることもあります。
- 発酵:金華火腿は発酵食品の一つで、微生物の働きによって旨味成分であるアミノ酸が生成され、独特の風味が強まります。このため、金華ハムは単に塩味が強いだけでなく、奥深い旨味が特徴です。

料理への使用
金華火腿は、中国料理でだしを取るための重要な食材です。スープや煮込み料理に使うと、非常に濃厚な旨味が加わり、深いコクが生まれます。
- 八宝鶏:金華火腿を鶏肉と一緒に蒸し、豪華な一品に仕上げる伝統的な料理。
- スープ:金華火腿の切り身をスープに入れて煮込むと、豊かな旨味が広がります。特に高級スープで使われることが多いです。
- 炒め物や蒸し物:金華火腿を薄くスライスして、野菜や豆腐と一緒に炒めたり蒸したりすると、塩味と旨味が料理全体に広がります。
いかがでしたか?
ドイツなどでつくられているラックスハムとよばれる生ハムがあります。
ラックハムは低温で燻製するのが特徴です。
日本で製造、販売されている生ハムの多くはラックスハムにあたります。

「ドイツのラックスハム」という食品は、「ラックス(Lachs)」というドイツ語で鮭(サーモン)を意味する言葉に由来しています。「ラックスハム(Lachsschinken)」は、実際に存在するドイツの食材で、直訳すると「サーモンハム」となりますが、実際にはサーモンではなく豚肉を使った製品です。名前の由来は、サーモンのように美しいピンク色の肉を持つためです。
発酵肉についてはこちらで終わります。
ありがとうございました。