こんにちは、garesuです。
おしゃれなカクテルの主役として、またデザート感覚で楽しめるお酒として知られているリキュール。
果実やハーブ、スパイスなど、素材の個性が活きたリキュールは、その種類も味わいも実に多彩です。

リキュールは、蒸留酒に果実、ハーブ、ナッツ、スパイス、花などの風味を加え、さらに砂糖やシロップで甘さを調整した香味酒のことです。
日本語では「リキュール類」「香味酒」とも呼ばれます。
リキュールの起源
起源は中世ヨーロッパの修道院や薬局にさかのぼります。もともとは薬用目的で作られていたのが始まりです。
起源と歴史的背景
リキュールは今でも伝統的なレシピで作られ、修道院由来のクラフトマンシップが受け継がれています。

クラフトマンシップとは‥職人が持つ「高い技術力と美意識をもって、丁寧にものづくりをする精神や姿勢」のことを指します。
12〜13世紀頃、ヨーロッパで蒸留技術が発展すると、修道士たちはハーブやスパイスを浸漬した酒を「薬酒」として製造しました。
修道院では病人の治療や健康維持のために、さまざまなハーブや植物をブレンドした酒が造られていました。
代表的なのがフランスの修道院で生まれた「シャルトリューズ」や「ベネディクティン」といった歴史あるリキュールです。
近代への変化
果実やナッツ、クリームなどのバリエーションも登場し、カクテル文化とともに世界中に広まりました。
ルネサンス期には、薬としてだけでなく嗜好品としての価値が見直され、貴族の間で人気になりました。
18〜19世紀になると、産業革命や技術革新により大量生産が可能になり、より多くの人々に親しまれるようになりました。

リキュールの基本構成要素
甘味料(砂糖、シロップ、蜂蜜など)
リキュールには通常100g/L以上の糖分が含まれます。
ベースアルコール(蒸留酒)
ウォッカ、ブランデー、ラム、ウイスキーなど、アルコール度数の高い中性スピリッツが用いられます。
香味素材(果実、ハーブ、スパイス、花など)
素材に応じて加工法が変わります。
製造工程
リキュールの製造工程は、素材の風味を最大限に引き出すために、とても繊細でかつ多様な手法が使われます。
一般的な製造工程をお伝えしますね。
抽出(マセレーション/浸漬)
香味素材をベースアルコールに漬け込むことで、成分を抽出します。
- マセレーション:果実やハーブを細かくし、数日〜数週間かけて抽出。
- 熱を加える場合もあり、風味の変化が生まれます。
蒸留(再蒸留タイプのみ)
マセレーションした液体を再蒸留することで、香りだけを抽出したクリアなリキュールができます。
- 例:オレンジ系リキュール(トリプルセック、グラン・マルニエなど)
調合(ブレンディング)
抽出された香味液と、他の香料・フレーバーを組み合わせて最終の風味を整えます。
- 同じリキュールでもブランドによって風味が異なるのはこの工程の差異です。
甘味添加(スウィートニング)
シロップや砂糖を加えて甘さのバランスを取ります。
- 加えるタイミングは製品ごとに異なります。
熟成(必要な場合)
一部のリキュールは木樽やステンレスタンクで熟成させ、風味をまろやかにします。
- 例:アマレットやハーブ系リキュール
ろ過・調整・瓶詰め
最終的に不純物をろ過し、アルコール度数を調整後、瓶詰めされ出荷されます。
香味抽出
リキュールの風味を決定づける「香味抽出」には、素材や目的に応じて異なる技術が使われます。
代表的な抽出方法は4つです。
マセレーション(浸漬法)
- 方法:果実やハーブなどをベースアルコールに漬け込む。
- 特徴:時間をかけてじっくりと香りや色素を抽出。
- 使用例:カシスリキュール、ハーブ系リキュールの多く。
- メリット:素材本来の風味を豊かに表現できる。

蒸留(ディスティレーション)
- 方法:香味素材をアルコールと共に加熱し、揮発成分を蒸留する。
- 特徴:精製された香り成分だけを抽出できる。
- 使用例:トリプルセック(オレンジの皮を蒸留)、ジンの製法にも類似。
- メリット:透明でクリアな仕上がり。雑味が少ない。
パーコレーション(濾過法)
- 方法:香味素材にアルコールを上から注ぎ、下に通して抽出する。
- 特徴:ハーブや花などの繊細な香りを丁寧に取り出す。
- 使用例:一部のハーブ系リキュールやアロマ重視の製品。
- メリット:熱を使わないため、繊細な香りを壊さず抽出可能。
エマルジョン(乳化混合)
- 方法:乳製品や卵、香料をアルコールと均一に混ぜる。
- 特徴:クリーミーな口当たりを実現。
- 使用例:ベイリーズ(アイリッシュクリーム)などのクリーム系リキュール。
- メリット:濃厚な味わいを表現できるが、保存には注意が必要。

リキュールの分類
リキュールは、使用される素材や風味、用途に応じていくつかの主要な分類に分けられます。
代表的な6つの分類をご紹介しますね。
果実系リキュール(フルーツリキュール)
- 特徴:果物の果汁や果皮を使用し、甘くて飲みやすい。
- 代表例
- カシスリキュール(クレーム・ド・カシス)
- ピーチツリー(ピーチ)
- キュラソー(オレンジ)
ハーブ・スパイス系リキュール
- 特徴:薬草や香辛料を使った、複雑で香り高い味わい。
- 代表例
- シャルトリューズ
- ベネディクティン
- ドランブイ(ハチミツ+ハーブ)
ナッツ・種子系リキュール
- 特徴:アーモンドやナッツの香ばしさと甘み。
- 代表例
- アマレット(アーモンド風)
- フランジェリコ(ヘーゼルナッツ)

クリーム系リキュール
- 特徴:乳製品を加えてクリーミーな口当たり。
- 代表例
- ベイリーズ(アイリッシュクリーム)
- カルーア(コーヒー+クリーム)
フローラル系リキュール
- 特徴:バラ、スミレ、ラベンダーなど花の香りが特徴。
- 代表例
- パルフェ・アムール(スミレ)
- サンジェルマン(エルダーフラワー)

特殊系リキュール(その他)
サンブーカ(アニス風味)
特徴:上記に当てはまらない個性的なリキュール。
例 エッグリキュール(卵黄使用)
白酒(バイジュウ)
中国は紹興酒(醸造酒)が代表する酒ですが、並んで「白酒」があります。
白酒は蒸留酒で無色透明なのでその名前が付いたとされています。
原料
中国の伝統的な蒸留酒「白酒」は、穀物を主な原料としています。
種類や地域によって違いがあります。
原料名 | 特徴 | 使用例 |
---|
高粱(こうりゃん)/ソルガム | 白酒の代表的原料。香りがよくアルコール発酵に適している | 多くの香型の白酒で使用(例:茅台、五粮液) |
小麦 | 発酵のための麹作りに用いられることが多い | 香りづけや麹の材料 |
トウモロコシ | 甘味が出やすく、まろやかな酒質になる | 地域によって主原料として使われる |
大麦 | 香りづけや風味の調整に使用 | 一部の麹や副原料に使われる |
米(もち米など) | 軽やかな風味、淡麗な味わいを出す | 「米香型」などに使用される |
エンドウ豆・豆類 | 麹菌の発酵を促進し、香りを豊かにする効果 | 特定の地域で副原料として使用 |
白酒の製造工程
中国の白酒の製造工程は伝統的かつ複雑で、「固体発酵」という独特の方法が使われます。
工程名 | 内容と特徴 |
---|---|
① 原料の準備 | 高粱(ソルガム)などの穀物を洗浄・蒸煮し、発酵に適した状態に加工する。 |
② 麹(チュウ)づくり | 小麦などを原料に「大麹」や「小麹」を自然発酵させる。白酒の香りと風味の決め手。 |
③ 混合・仕込み | 蒸した原料と麹を混ぜ、発酵室(酒窖)で固体発酵させる。ここが白酒の特徴。 |
④ 発酵(固体状態) | 穀物のまま、固体の状態で1〜3ヶ月発酵。微生物の働きで糖とアルコールが生成される。 |
⑤ 蒸留 | 発酵済みの穀物を再び蒸し、アルコール成分を抽出する。伝統的な蒸留器具を使用。 |
⑥ 熟成 | 蒸留した酒を陶器製の甕(かめ)やステンレスタンクに貯蔵し、数ヶ月〜数年熟成させる。 |
⑦ ブレンド・調整 | 熟成酒を複数ブレンドし、香り・味のバランスを整える。 |
⑧ ろ過・瓶詰め | 不純物をろ過して、瓶詰めして出荷される。 |
白酒の特徴的な点
香型によって工程が微妙に異なる:濃香型、清香型、醤香型などで麹や熟成法が異なる。
固体発酵:液体の中で発酵させる日本酒やウイスキーと違い、穀物の「固形状態」で発酵させる。
自然発酵:麹室や酒蔵に住み着く微生物の力を利用。自然との共存が重要。

いかがでしたか?
白酒は、ただの蒸留酒ではありません。
中国の風土、歴史、そして職人たちのクラフトマンシップが育んだ「文化の結晶」です。
一口ごとに、その深い香りと奥行きのある味わいに、何千年もの伝統が息づいていることを実感できるでしょう。
ぜひ、自分だけの一本を見つけて、白酒の世界をじっくり味わってみてくださいませ。
参考文献
「発酵食品ソムリエ講座テキスト1 伝統的な和食と日本の発酵文化」U-CAN
「発酵食品ソムリエ講座テキスト2 世界にひろがる発酵食品と健康」U-CAN
「発酵食品を楽しむ教科書」 ナツメ社