こんにちは、garesuです。
魚醤(ぎょしょう)とは、魚や魚介類を発酵させて作られる調味料の一種です。
主に魚や塩を使い、長期間発酵させることで得られる液体を調味料として利用します。
魚の旨味や香りが凝縮されており、特に東南アジアや東アジア、また日本でも古くから使われてきました。
料理に深みやコクを加えるために使用されたりします。
魚醤には魚肉のタンパク質が分解されてできたアミノ酸や核酸の濃厚なうま味があります。
また、発酵によって生じる複雑で強い香りをもつのも特徴です。

日本のさまざまな魚醤
しょっつる
秋田県を代表する伝統的な魚醤で、特にハタハタ(鰰)という魚を原料に作られます。
しょっつるは、魚を塩漬けにして長期間発酵させることで得られる調味料で、塩味と魚の旨味が強く、独特の風味があります。
秋田の寒冷な気候の中で生み出されたこの調味料は、保存性が高く、昔から家庭料理や郷土料理に広く利用されてきました。
しょっつるの主な特徴
原材料:主にハタハタ、他の魚介類が使われることもある
発酵期間:数ヶ月から1年以上
風味:濃厚な塩味と魚の旨味が特徴的

しょっつるの代表的な使い方
しょっつる鍋:しょっつるをベースにしたスープで、ハタハタや野菜を煮込んだ秋田の郷土料理です。魚の旨味としょっつるの風味が活かされ、寒い冬にぴったりの鍋料理です。
調味料として:炒め物、煮物、スープの隠し味に少量加えることで、料理全体にコクと深みを与えることができます。
タレやドレッシング:しょっつるをドレッシングやタレに加えれば、料理に特別な風味が加わります。
しょっつるは、強い塩味があるため、使用する際には少量でも十分な風味を引き出せます。秋田の伝統的な食文化を代表する調味料として、地元だけでなく全国的にも注目されています。
いしる
いしる(または「いしり」とも呼ばれます)は、石川県能登地方で作られる伝統的な魚醤です。
いしるは、イカやイワシなどの魚介類を塩とともに発酵させて作られ、濃厚な旨味と独特な香りが特徴です。
この魚醤は、能登地方の郷土料理に欠かせない調味料として知られ、特に風味が強いため、料理に少量加えるだけで深いコクを与えることができます。
いしるは、秋田県のしょっつる、香川県のいかなご醤油と並んで日本三大魚醤に数えられます。

いしるの主な特徴
主な原材料:イカ、イワシ、サバなどの魚介類
発酵期間:数ヶ月から数年
風味:強い塩味と独特の魚の旨味が特徴。ナンプラーやしょっつるよりもさらに濃厚な味わい。
いしるの使い方
いしる鍋:いしるをベースにした鍋料理で、魚介類や野菜を煮込む料理。能登地方の郷土料理として親しまれています。
炒め物や煮物:いしるを少量加えることで、料理全体に深いコクを加えることができます。特に魚介類との相性が良いです。
調味料として:隠し味としてスープや麺類に使用したり、タレやドレッシングに加えて風味を強調するのに適しています。
いしるは石川県の豊かな自然と漁業を背景に発展してきた調味料で、現代の料理にも活用され、能登地方の食文化を象徴する存在です。
いかなご醤油
主に兵庫県や瀬戸内海地域で作られている魚醤の一種で、いかなご(小型の魚、主にシラスやカタクチイワシの幼魚)を原料にしています。
いかなごを塩とともに発酵させて作られたこの魚醤は、独特の旨味と香りを持ち、特に地元の郷土料理で使用されています。

いかなご醤油の特徴
主な原材料:いかなご(シラスやカタクチイワシの幼魚)
風味:濃厚で塩味が強く、いかなごの独特な魚の旨味が特徴です。
色合い:濃い琥珀色をしており、醤油に似た外観です。
いかなご醤油の使い方
煮物や鍋料理:特に魚介類を使った料理の風味付けに適しており、魚の旨味が料理にしっかり染み渡ります。
炒め物:少量を加えることで、炒め物にコクと深みが増します。
隠し味として:スープや麺類、タレなどに加えることで、料理全体の味に豊かさを与えることができます。
いかなご醤油は、ナンプラーやしょっつるなどの他の魚醤と同様に、日本の伝統的な発酵食品文化の一部です。
特に瀬戸内地方では、地元の魚を活かした調味料として古くから親しまれています。
世界の魚醤
魚醤はアジアで発達した発酵調味料です。
ヨーロッパの魚醤は数は少ないですが代表的なものを紹介しますね。
ニョクマム 🇻🇳
ニョクマムは、ベトナムを代表する伝統的な魚醤で、特にアジやイワシなどの小魚を塩と一緒に長期間発酵させて作られる調味料です。
東南アジア料理、特にベトナム料理には欠かせない調味料で、魚の旨味が凝縮され、強い塩味と独特の香りが特徴です。

ニョクマムの主な特徴
原材料:アジ、イワシなどの小魚と塩
発酵期間:6ヶ月から1年程度(発酵が進むほど味が深くなる)
風味:強い塩味と魚の旨味が特徴で、ナンプラーと似ていますが、ニョクマムはよりまろやかな風味を持つことが多いです。
色合い:澄んだ琥珀色が特徴
ニョクマムの使い方
ヌクチャム(Nước chấm):ニョクマムに砂糖、酢、唐辛子、ニンニク、ライム果汁を加えたタレで、生春巻きや揚げ物のディップソースとしてよく使われます。
スープや炒め物:少量のニョクマムを加えることで、料理全体に深いコクと旨味を与えます。特にベトナムのフォー(米麺スープ)などで使用されます。
煮物や鍋料理:魚や肉を煮込む際に、塩分と風味を補うために加えます。
ニョクマムは、ベトナム料理だけでなく、タイ料理や他の東南アジア料理にも使われることがあり、料理に風味の深みを与える万能調味料です。魚醤独特の香りがあるため、少量の使用でも料理の味わいが豊かになります。
ナンプラー 🇹🇭
タイを代表する魚醤で、魚(主にイワシ)を塩漬けにして発酵させて作られる調味料です。
ナンプラーは、タイ料理に欠かせない調味料であり、料理に塩味と旨味を加える役割を果たします。
ナンプラーは、ベトナムのニョクマムに似ていますが、少し異なる風味を持ち、より塩味が強いことが特徴です。

ナンプラーの主な特徴
原材料:主にイワシと塩
発酵期間:6ヶ月から1年程度
風味:強い塩味と魚の旨味、独特の香りが特徴
色合い:濃い琥珀色または薄い茶色
ナンプラーの使い方
トムヤムクン:タイの有名なスープ「トムヤムクン」にナンプラーを加えることで、深い旨味とコクが出ます。
パッタイ:タイ風焼きそば「パッタイ」に使われ、麺や具材に旨味を加えます。
炒め物:タイの炒め物では、隠し味としてナンプラーが使われ、風味に深みを加えます。
タレやドレッシング:ナンプラーをベースにしたタレは、生春巻きやサラダのドレッシングとしても使用されます。
ナンプラーの特徴的な使い方
ナンプラーは、タイ料理だけでなく、他の東南アジア料理でも使われ、料理に塩味と旨味をプラスします。特にナンプラーの独特の香りと濃厚な味わいは、料理全体を引き立てる調味料として重宝されています。
少量でも強い風味が出るため、料理に使う際は少しずつ加えて味を調整することがポイントです。
パティス 🇵🇭
パティスは、フィリピンを代表する魚醤で、主にイワシなどの魚を塩漬けにして発酵させた調味料です。
フィリピン料理に広く使われ、塩味と深い魚の旨味が特徴です。
パティスは、フィリピン料理に塩分を加えるための基本的な調味料として、多くの料理に使われており、他の東南アジアの魚醤(ナンプラーやニョクマム)と似た役割を果たします。
パティスの主な特徴
原材料:イワシ、アジなどの小魚と塩
発酵期間:数ヶ月から1年以上
風味:強い塩味と魚の旨味、ナンプラーやニョクマムに似た風味だが、パティスは少しマイルドな味わいのものもあります。
色合い:澄んだ琥珀色、時には薄い茶色
パティスの使い方
シニガン(Sinigang):フィリピンの酸味が特徴のスープ「シニガン」などに使われ、魚の旨味を加えます。
炒め物:フィリピンの炒め物にもパティスを使い、食材に塩味と旨味をプラスします。
ディップソース:パティスを酢やライムと混ぜたシンプルなディップソースとして、揚げ物や焼き物の料理に添えることも一般的です。
隠し味:スープやシチューなどの隠し味として少量加え、全体の味を引き締めるためにも使用されます。
パティスの特徴的な使い方
パティスは、塩や醤油の代わりとしても利用でき、料理に独特の風味を与えます。
少量で強い風味を持つため、味付けを調整する際は少しずつ加えることがポイントです。
フィリピンでは、食卓に置かれる調味料としてもよく見かけられ、好みに応じて各料理に振りかけて楽しむこともあります。
ブドゥ 🇲🇾
ブドゥ(Budu)は、マレーシアの一部地域やタイ南部で作られる伝統的な魚醤です。
特にマレーシアの東海岸のケランタン州やトレンガヌ州でよく使われる調味料です。
ブドゥは、小魚(主にイワシ)を塩とともに発酵させて作られ、独特の濃厚な旨味と香りが特徴です。ナンプラーやニョクマムと同じく魚醤ですが、地域特有の使い方や風味の違いがあります。
ブドゥの主な特徴
原材料:主にイワシなどの小魚と塩
発酵期間:数ヶ月から1年程度
風味:強い塩味と魚の旨味があり、特にナンプラーよりも濃厚で、少し酸味を感じることもあります。
色合い:暗い茶色または琥珀色
ブドゥの使い方
ご飯に添える:マレーシアでは、ブドゥをそのままご飯にかけて食べることが一般的です。特に野菜や魚と一緒に食べることが多いです。
ディップソース:ライム、唐辛子、タマネギ、砂糖などを混ぜたディップソースとして使用され、生野菜や魚のフライと一緒に楽しむことが多いです。
サラダや和え物:野菜サラダや和え物に少量加えることで、料理に深みのある風味を与えます。
ブドゥの特徴的な使い方
ブドゥは、他の魚醤と同様に、料理にコクと塩味を加える役割を果たしますが、マレーシアやタイの南部では特に日常的に使われる調味料です。独特の香りと風味が強いので、少量で料理に強いインパクトを与えることができます。
特にローカルな食文化と結びついており、地元の人々にとっては非常に親しみのある味です。
プラ・ホック 🇰🇭
プラ・ホックは、カンボジア料理で使われる伝統的な発酵魚のペーストで、カンボジア料理に欠かせない調味料の一つです。
プラ・ホックは、主に淡水魚(よく使われるのはナマズや小魚)を塩漬けにして、長期間発酵させたものです。
ペースト状で、非常に強い風味と塩味を持っています。
カンボジアでは、調味料としてだけでなく、メインディッシュの一部としても利用されることがあります。

プラ・ホックの特徴
原材料:淡水魚(ナマズ、小魚)と塩
発酵期間:数ヶ月から1年程度
風味:非常に濃厚な塩味と強い発酵臭が特徴。魚の旨味が強く、独特の風味を持っています。
形状:ペースト状
プラ・ホックの使い方
調味料として:スープやカレーに少量加えて、料理に深みを持たせるために使います。カンボジアのスープ料理「サムロール・マチュー」などで使われます。
ディップソース:ライム、唐辛子、砂糖、ニンニクなどを加えてディップソースにすることもあり、生野菜やご飯と一緒に食べるのが一般的です。
揚げ物や蒸し物:プラ・ホックを使用して魚や肉を包んだり、揚げたり、蒸したりする料理もあります。
直接食べる:カンボジアの一部の地域では、プラ・ホックをそのまま、ご飯や野菜と一緒に食べることもあります。
プラ・ホックの特徴的な使い方
プラ・ホックは非常に強い発酵臭と風味を持っているため、初めて使う場合は少量ずつ加えるのが一般的です。
カンボジアでは、日常的な調味料として使用され、家庭料理や屋台料理などで広く親しまれています。
発酵食品として、栄養価も高く、カンボジアの伝統的な食文化において非常に重要な役割を果たしています。
コラトゥーラ 🇮🇹
コラトゥーラは、イタリア・カンパニア州のアマルフィ海岸沿いで作られる伝統的な魚醤です。
特にチェターラ(Cetara)という漁村で作られていることで有名です。
コラトゥーラは、イワシを主に使用し、塩漬けにして発酵させ、その発酵液を抽出することで作られます。
この調味料は、古代ローマ時代のガルムという魚醤に起源を持つと言われています。
コラトゥーラの特徴
原材料:イワシと塩
発酵方法:イワシを木樽に詰め、塩で発酵させ、その後、液体をろ過して抽出
風味:非常に濃厚な塩味と魚の旨味が凝縮され、深いコクがありますが、クセは比較的少なく、繊細で洗練された風味が特徴です。
色合い:澄んだ琥珀色
コラトゥーラの使い方
パスタ料理:特にスパゲッティ・アリーチ(イワシのパスタ)やペペロンチーノのようなシンプルなパスタに、コラトゥーラを少量かけて旨味を加えることが一般的です。ニンニクやオリーブオイルと合わせて使うことが多いです。サラダのドレッシング:レモン、オリーブオイル、ハーブと混ぜて、魚介類のサラダや野菜にかけることで、風味を引き立てます。
スープや煮込み料理:スープやシーフード料理にコラトゥーラを少量加えることで、味わいに深みを持たせることができます。
隠し味:料理全体に独特の旨味を加えるため、ソースやドレッシングの隠し味として使用されます。
コラトゥーラの特徴的な使い方
コラトゥーラは、非常に強い塩味と旨味を持っているため、少量で十分な風味を与えることができます。
特にイタリア料理では、パスタやシーフード料理に使われることが多く、味に深みと豊かさを加える調味料として重宝されています。
日本の魚醤や東南アジアの魚醤と比べると、よりまろやかで洗練された味わいが特徴です。
いかがでしたか?
発酵調味料もそれぞれの国の特徴がありますね。
外国の発酵調味料は味や風味もつよいようです。