こんにちは、garesuです。
前回は世界四大スピリッツのウオッカについてお伝えしました。
今回はジン、ラム、テキーラについてお伝えしますね。

ジン
ジンは、穀物を原料とした蒸留酒に、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)を中心とするボタニカル(植物由来の香草・果実・スパイス)で香り付けしたスピリッツです。
イギリスで連続式蒸留機が発明されると改良されて人気が高まり、無色透明のドライなタイプに洗練されていきました。
爽やかでドライな味わいが特徴で、カクテルの定番ベースとして世界中で愛されています。
ジンの歴史
医療用リキュール(11〜16世紀)
- ジンのルーツはオランダやイタリアの修道院で作られていた薬草酒にあります。
- 特にオランダでは、薬用酒「ジュネヴァ」が発達。
- ジュネヴァにはジュニパーベリーが使われ、消化促進や腎臓疾患に効果があるとされていました。
オランダからイギリスへ(17世紀)
- 17世紀半ば、オランダ総督ウィレム3世がイギリス国王(ウィリアム3世)となったことにより、ジンの原型がイギリスへ伝来。
- イギリスではこの薬酒が「ジン(Gin)」として広まりました。
- 庶民に安く提供された結果、乱用され“ジン狂時代”を引き起こした(18世紀初頭の「ジン・クレイズ」)。
規制と品質の向上(18世紀)
- イギリス政府はジンの粗悪品による社会問題を受けて、規制を強化(ジン法)。
- 品質管理とライセンス制により、プレミアムジンの文化が発展。
カクテル文化とジンの再興(19〜20世紀)
- 19世紀には、ロンドンドライジンが登場し、軽やかでドライなスタイルが人気に。
- 20世紀にはマティーニやジントニックなど、クラシックカクテルのベースとして定着。
- 第二次世界大戦後、一時はウオッカの台頭により人気が低下。
クラフトジン・ブーム(21世紀)
- 2000年代以降、世界各国で地元ボタニカルを活かしたクラフトジンがブームに。
- 日本でも柚子や玉露を使った和のジンが登場し、ジンは再び注目の的に。
原料と製造
ベーススピリッツの準備
- トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦などの穀物から作られた中性スピリッツを使用。
- アルコール度数が95%以上で、無味無臭に近いクリアな状態に精製。
ボタニカルの選定
- ジュニパーベリー(セイヨウネズ)が必須。
- その他:コリアンダー、アンジェリカルート、オレンジピール、カルダモン、シナモンなど。
香り付けの方法
方法名 | 特徴 |
---|---|
マセレーション(浸漬) | ベーススピリッツにボタニカルを一定期間浸けて、香り成分を抽出。伝統的で深い味わい。 |
ヴェイパー・インフュージョン | 蒸気でボタニカルの香りをスピリッツに付ける方法。繊細で洗練された香りが特徴。 |
コンパウンド方式 | 蒸留後に香料やエキスを加える方法。簡易製法だがクラフト性は低い(ジンの定義には含まれないことも)。 |
再蒸留
- 香りを付けたスピリッツを単式蒸留器や連続式蒸留器で再蒸留。
- この過程で、不要な雑味を除去しながら、香りの核となる成分を凝縮。
加水・調整
- 蒸留されたジンに加水し、一般的にアルコール度数40%前後に調整。
- フィルターで濁りを取り、製品のクリアさを保つ。
瓶詰め・出荷
- 最終調整後、ラベリングして出荷。
- クラフトジンでは、手作業でボトル詰めされることも多い。
製造のポイント
- ジュニパーベリーが香りの中心であることが、ジンの定義上必須。
- ボタニカルの選定と比率が、ブランドごとの個性を大きく左右。
- 大規模生産とクラフト製法では、香りの複雑さや鮮度に違いが出る。
ジンの代表的スタイルと銘柄
スタイル | 特徴 | 有名ブランド |
---|
ロンドンドライジン | クリアでドライ。添加物なしの本格派 | タンカレー、ボンベイサファイア |
オールドトムジン | やや甘めで古風なスタイル | ヘイマンズ |
ジュネヴァ | モルトベースでやや濃厚、オランダ由来 | ボルス、ノールド |
クラフトジン | 地域素材や独自のボタニカルを使用した個性派 | 季の美(京都)、ナンバー3 |
ラム
ラムは、サトウキビを原料とした蒸留酒で、特に中南米・カリブ海地域を中心に生産されています。
砂糖の副産物であるモラセス(糖蜜)やサトウキビジュースを発酵・蒸留して作られ、バーボン樽などで熟成されることが多いです。
活性炭による濾過の有無や貯蔵方法によってホワイト・ラム、ゴールド・ラム、ダーク・ラムの3種類に分けられ、風味が良いダーク・ラムはドライフルーツの漬け込みなど製菓用にも適しています。
ラムの歴史
カリブ海だけでなく、中南米、アフリカ、インド、日本でも生産が進んでいる。
17世紀、カリブ海のサトウキビプランテーションで誕生。
奴隷制度や植民地支配と深く関わっていた背景を持つ。
英仏西の海軍でも広く飲まれ、「ラムレシオ」制度として支給されていた。
原料と製法
原料
- 糖蜜(モラセス):精製過程で残る濃厚な液体。最も一般的。
- サトウキビジュース:フレッシュな絞り汁。香り高く、主にアグリコールラムで使用。
製造工程
- 発酵
酵母を使って糖をアルコールに変える。短時間で発酵すると軽やかに、長時間だと重厚な味に。 - 蒸留
連続式または単式蒸留機を使用。香りやコクの調整が可能。 - 熟成
オーク樽(特にバーボン樽)で熟成。色と香りの深みが加わる。 - 加水・ブレンド
アルコール度数を調整し、味のバランスを取って出荷。
現在は、さとうきび栽培が盛んな地域が製造の中心で、ブラジルをはじめ中南米で同系統の酒がつくられている。
日本でも、沖縄の南大東島や鹿児島の奄美群島などで製造されている。
ラムの分類
タイプ | 特徴 |
---|
ホワイトラム | 無色透明。軽くてクセがなく、カクテル向き。 |
ゴールドラム | 樽熟成により琥珀色。香り豊かで柔らかい味わい。 |
ダークラム | 濃い茶色。長期熟成またはカラメル添加でコクが強い。 |
スパイストラム | 香辛料やバニラを加えたフレーバータイプ。 |
アグリコールラム | サトウキビジュース使用。フランス領で生まれた芳香豊か。 |
ラムリキュール | 甘味を加えた軽いリキュールタイプ。 |
飲み方・カクテル
飲み方 | 説明 |
---|---|
ストレート | 熟成されたダークラムはウイスキーのように楽しめる |
ロック | 香りと余韻をゆっくりと堪能 |
カクテル | モヒート、ダイキリ、ピニャコラーダなどが代表的 |
ホットラム | お湯割りやホットチョコにラムを加える冬の楽しみ方 |
主な生産国と代表銘柄
地域 | スタイル | 有名ブランド |
---|
ジャマイカ | 重厚で香り高い | アップルトン、マイヤーズ |
キューバ | 軽快でドライ | ハバナクラブ、バカルディ |
フランス領 | アグリコール | Rhum Clément、Damoiseau |
中南米 | バランス型 | ロン・サカパ(グアテマラ)、ディクタドール(コロンビア) |
テキーラ
テキーラは、メキシコ原産の蒸留酒で、アガベ(竜舌蘭)という植物を原料としたスピリッツです。
特に「ブルーアガベ(アガベ・テキラーナ・ウェーバー)」を使い、ハリスコ州とその周辺の限られた地域でのみ製造が認められています。
テキーラの歴史
1974年、原産地呼称(D.O.C.)が法制化され、「テキーラ」は特定地域の特産品に。
起源はアステカ時代の発酵飲料「プルケ」
16世紀、スペイン人が蒸留技術を持ち込み、現在のテキーラの形に
19世紀、テキーラという名称が定着。20世紀に入り、国際的にも知られるブランドに成長。
原料と製法
原料:アガベ(竜舌蘭)
成熟に6〜10年かかるため、非常に手間がかかる
使用するのはブルーアガベのみ(100%アガベ製品の場合)
製法工程
熟成(必要に応じて)
ステンレスタンクまたはオーク樽で熟成される。
収穫(ハリンダ)
熟したアガベの葉を切り落とし、中心部の「ピニャ(球茎)」を収穫。
加熱・糖化
オーブン(伝統的には石窯)でゆっくりと加熱し、糖を引き出す。
粉砕・抽出
加熱後のピニャをすり潰してジュース(モスト)を抽出。
発酵
ジュースに酵母を加え、アルコール発酵。
蒸留
通常2回蒸留(銅製やステンレスの蒸留器)
テキーラの分類(熟成度別)
種類 | 熟成期間 | 特徴 |
---|---|---|
ブランコ(シルバー) | 熟成なしまたは60日未満 | フレッシュでアガベの風味が強い |
レポサド | 2ヶ月〜1年未満 | 樽の香りとアガベのバランス |
アニェホ | 1年以上〜3年未満 | リッチで複雑な味わい、ウイスキーに近い |
エクストラ・アニェホ | 3年以上 | 非常に深い味わいと長い余韻 |
飲み方・楽しみ方
飲み方 | 説明 |
---|
ストレート | 特にレポサドやアニェホは常温で香りを楽しむ |
ショット | ライムと塩で楽しむ伝統スタイル |
カクテル | マルガリータ、テキーラ・サンライズなどが定番 |
フードペアリング | チーズ、グリル肉、チョコレートなどとも好相性 |
主な銘柄とおすすめブランド
ブランド | 特徴 |
---|---|
パトロン | 上質でバランスの取れた味わい、プレミアムテキーラの代表格 |
ドン・フリオ | 柔らかくスムーズ。初心者にも飲みやすい |
クエルボ | 世界最大の生産量を誇る老舗ブランド |
エル・ヒマドール | コスパが良く、本格派にも人気 |
いかがでしたか?
ジン、ラム、テキーラは、それぞれの文化や風土に根ざした独自の香りと味わいを持つスピリッツです。
カクテルの素材としても、ストレートでも楽しめる多彩な表情を持っています。
ご自身の好みに合った一本を見つけ、世界各地のスピリッツ文化を感じてみてください。
参考文献
「発酵食品ソムリエ講座テキスト1 伝統的な和食と日本の発酵文化」U-CAN
「発酵食品ソムリエ講座テキスト2 世界にひろがる発酵食品と健康」U-CAN
「発酵食品を楽しむ教科書」 ナツメ社