【ビール 発酵酒】

こんにちは、garesuです。

ビールについてお伝えしますね。

ビールもワインと同様、「適量」であればいくつかの健康効果が期待される飲み物です。
ビールはアルコール度数が低くても飲む量が多くなりがちなので、注意が必要ですよ。

ビールは麦芽と水、ホップなどを原料として、ビール酵母で発酵させた醸造酒のことです。
ビール酵母にはサッカロマイセス、セレビシエが使われます。

アルコール度数は5度前後とほかの酒類に比べると低く、炭酸ガスによる爽快感やホップに由来する苦味、爽やかな香りが特徴です。

ビールの歴史

紀元前3000年ごろ【メソポタミア文明】

  • 現在のイラク周辺、シュメール人が大麦を使った発酵飲料(初期のビール)をつくっていた。
  • 粘土板には「ビールの製法」が記されており、ビールは神々への捧げものにもされていました。
  • シュメールの女神「ニンカシ」はビールの女神とされ、醸造の詩も残っています。

古代エジプト

  • ピラミッド建設に関わった労働者たちは、日常的にビールを飲んでいたと言われています。(パンとビールが支給されていた)
  • ビールは栄養価の高い「液体のパン」とも呼ばれました。

古代ギリシャ・ローマ時代

  • ワインが主流になり、ビールの地位は一時低下。
  • しかしゲルマン民族など北方の民族はビールを愛飲していました。

中世ヨーロッパと修道院

  • 中世になると、修道院がビールの製造を本格的に始めます。当時はグルートとよばれるハーブの混合物を添加して風味付けをおこなっていました。
  • 安全な飲料水が少なかったため、ビールは生活必需品。
  • この時代にホップ(ビール特有の苦味と香りをもたらす植物)が使われ始め、保存性と風味が向上。
  • ドイツでは1516年にビール純粋令が出され、大麦・ホップ・水以外の原料の使用が禁止されました。

産業革命と近代化

  • 19世紀になると産業革命により、大量生産品質の安定が可能に。
  • 低温発酵の「ラガービール」が登場し、世界中に広がります。
  • 冷蔵技術やパストゥールによる殺菌法の発見も、ビールの発展を後押ししました。

日本におけるビールの歴史

年代出来事
江戸末期オランダ人により「ビール」が日本に伝来
1870年横浜で日本初のビール醸造所(スプリング・バレー・ブルワリー)が設立
1876年札幌ビール(現サッポロビール)誕生
昭和期大衆文化とともにビールが家庭にも普及
平成以降クラフトビールブーム、多様なスタイルが人気に

ビールの原料

ビールの味や香り、泡立ちなどを決めるうえで重要なのが「原料」です。

大麦麦芽(モルト)

ビールの「骨格」をつくる主原料

  • 役割:発酵のための糖分を提供、香ばしい風味とコクを生む
  • 製法:大麦を発芽させた後、乾燥して麦芽にする(これがモルト)
  • 色や香りに影響:麦芽の焙煎度により、ビールの色(淡色〜黒色)が決まる

麦は穂の形状によって二条大麦六条大麦に大別されますが、一般的に大麦というと六条大麦を指します。
二条麦は別名ビール麦ともいいます。麦の一粒が大きく、デンプンを多く含むのが特徴です。

モルトの種類:

  • ピルスナーモルト(淡色):さっぱり系ビールに
  • カラメルモルト:甘みと深みを出す
  • ローストモルト:黒ビールに使われる、香ばしい風味

ホップ

アサ科のつる性植物で、和名は西洋唐花草。ビール醸造に使用されるのは、受粉前の雌株が持つ「鞠花」という部分で、その中の黄金色の粉「ルプリン」に含まれる精油や樹脂がビール独特の苦味や芳香、泡立ちをもたらします。

ビール特有の「苦味」と「香り」のもと

  • 役割
    • ビールの苦味と香り付け
    • 抗菌作用でビールを腐りにくくする
  • 使用部位:ホップという植物の「雌花」
  • 香りの種類:柑橘系、草、松、スパイシーなど多様!

ホップの入れ方によって変わる:

  • 苦味重視:煮沸時に入れる(ビタリングホップ)
  • 香り重視:発酵後期に入れる(アロマホップ、ドライホッピング)

ビールの9割以上を占める「命の水」

  • 役割:仕込みや麦芽の糖化など、あらゆる工程で使用される
  • 水質の違いが味に大きな影響:
    • 軟水(日本やチェコ):すっきり、軽やかな味
    • 硬水(ドイツなど):コクがあり、苦味がしっかり

名水の土地はビールの名産地になりやすい(例:チェコのピルゼン)


酵母(イースト)

糖をアルコールと炭酸に変える「微生物の働き」

  • 役割:発酵を行い、アルコールと炭酸ガスを生成
  • 種類によってビールのスタイルが変わる
    • 下面発酵酵母:低温発酵、スッキリ(ラガービール)
    • 上面発酵酵母:常温発酵、フルーティ(エールビール)
    • 自然発酵酵母(ランビックなど):野生酵母による個性的な風味

その他の副原料(ビールの多様性を生む)

材料目的・効果
コーン・米味を軽くし、すっきりとした飲み口に
果物・香辛料香りづけ(柑橘、コリアンダーなど)
小麦柔らかい口当たり、泡持ちアップ
ハチミツ風味のアクセント、香り付けに

副原料の添加は原料コストを抑えるだけでなく、風味や味わいのバランスのよいビールをつくるためです。

ビールの醸造工程

ビールの醸造工程は、古くから伝わる伝統と、現代の科学技術が融合とても奥深いプロセスです。

製麦(せいばく)モルティング

目的:大麦を発芽させ、酵素を活性化させる。

工程

  1. 浸麦(しんばく):大麦を水に浸して吸水させる(1〜2日)。
  2. 発芽:水から出し、湿度・温度を管理しながら発芽(4〜6日)。
  3. 焙燥(ばいそう):発芽した大麦を熱風で乾燥させて酵素を保持。

発芽具合や焙燥温度で、麦芽の香ばしさや色が変わります(ペールモルト、チョコレートモルトなど)。

糖化(マッシング)仕込み

目的:麦芽に含まれるデンプンを酵素の力で糖に分解する。

工程

  • 粉砕した麦芽を温水と混ぜて「マッシュ」と呼ばれる状態にし、温度(65℃前後)を保ちながら数時間加熱。
  • アミラーゼ酵素が働いて、デンプン → 麦芽糖などの発酵性糖類に変換。

※糖化が完了したマッシュを濾過したものを麦汁と言います。最初に得られた麦汁を「一番搾り」と呼んでいます。

主発酵(一次発酵/アルコール発酵)

主発酵は、酵母が麦汁中の糖を分解し、アルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)を生成する最も重要な発酵工程です。

期間

  • エール:3〜7日(常温:15〜25℃)
  • ラガー:7〜14日(低温:7〜15℃)

発酵の種類

  • 上面発酵(エール系):
    • 酵母が液面に浮かびやすく、香りが豊か。
  • 下面発酵(ラガー系):
    • 酵母が底に沈殿。すっきりとした味わい。

主な生成物 : エタノール・炭酸ガス(天然の泡)・エステル類やフェノール類(香りや風味の成分)

後発酵(二次発酵・熟成)

主発酵後のビールをさらに熟成させ、風味の調和や不純物の沈殿を促す工程です。ラガービールでは特に重要です。

期間:数週間〜数ヶ月

温度:0〜5℃ほどの低温環境

目的

  • 酵母やタンパク質の沈殿
  • 苦味の丸み
  • ガス圧の安定
  • 残留糖の微発酵(軽微な炭酸の生成)

ビールの透明度や「喉越し」がこの工程で決まることも多いです。

濾過(ろ過)

発酵・熟成後のビールに残る酵母や微粒子を物理的に除去して、透明にする工程です。

種類と方法

粗濾過(あらろか)

  • 大まかな沈殿物(ホップ残渣、酵母)を除去。

精密濾過(マイクロフィルターなど)

  • 微生物レベルの酵母も除去し、長期保存可能に。

フィルターの種類

  • セルロースフィルター
  • ダイアトマイト(珪藻土)フィルター
  • メンブレンフィルター(無菌ろ過用)

一部のクラフトビールは濾過を行わず「無濾過ビール」として販売されます。酵母の風味が残り、濁りがあります。

加熱殺菌(パストリゼーション)

ビールを一定温度で加熱し、微生物(酵母・細菌)を死滅させて保存性を高める工程です。

方法
フラッシュパストリゼーション(瞬間加熱)

  • 約60〜72℃で15〜30秒間加熱 → 急冷

トンネルパストリゼーション

缶や瓶ごと約60℃で10〜30分間加熱 → 緩やかに冷却

特徴
安定した品質と長期保存が可能。

一方で、熱により風味が若干劣化することもあります。

加熱殺菌を行わない「生ビール(ナマビール)」は、冷蔵保存が必要ですが、フレッシュな風味が魅力です。

工程の役割比較表

工程主な目的温度/期間
主発酵アルコール・炭酸ガスの生成7〜25℃、3日〜2週間
後発酵熟成、風味の調整、沈殿0〜5℃、数週間〜数ヶ月
濾過酵母・不純物の除去、透明化室温〜冷却
加熱殺菌微生物の死滅、保存性向上60〜72℃で数秒〜数分

ビール造りは、繊細な温度管理と時間の積み重ねによって成り立っています。
クラフトビールや地ビールでは、この4工程をどう扱うかで個性が大きく変わってくるのが面白いところですね。

日本醸造協会資料 (https://www.jozo.or.jp/)

『ビールの科学』(講談社ブルーバックス)

ビール(ラガー)ができるまで

ビール(ラガー)ができるまでの過程を簡単にご紹介しますね。
ラガービールは、低温で発酵・熟成されることで知られており、爽やかでキレのある味わいが特徴です。

原料の準備

主な原料

  • 麦芽(モルト):主に大麦を発芽させたもの。香りや色、味わいに影響。
  • ホップ:香り付けと苦味、保存性を高める役割。
  • :ビールの約90%以上を占める重要な成分。
  • 酵母:糖をアルコールと炭酸ガスに変える発酵の主役。

糖化(マッシング)

麦芽を砕き、温水で煮て糖分を抽出します。これにより「麦汁(ばくじゅう)」ができます。

煮沸とホップ添加

麦汁を煮沸しながら、段階的にホップを加えます。これで香りと苦味が調整されます。

冷却と発酵

麦汁を冷却し、ラガー酵母を加えて発酵。ラガーは低温(8〜12℃)で、1〜2週間かけてゆっくりと発酵させます。

熟成(ラガリング)

発酵後、さらに低温で数週間から数ヶ月間熟成させます。これにより味がまろやかになり、クリアなビールになります。

濾過・瓶詰め

不純物や酵母を濾過してから瓶や缶に詰めて完成です。

ラガービールは時間と手間をかけてじっくりと作られる飲み物です

いかがでしたか?

次はビールの分類をお伝えしますね。

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