こんにちは、garesuです。
日本各地に魚の糠漬けがあります。
代表的なものをお伝えしますね。
日本各地 魚の糠漬け
日本各地では、地域の特産の魚を使ったさまざまな魚の糠漬けが作られており、それぞれの地域独自の風味や製法があります。
各地の気候や風土、食文化に応じて発展してきたこれらの糠漬けは、保存食としての役割だけでなく、地域の伝統料理としても重要な位置を占めています。

へしこ(福井県、石川県)
- 概要: へしこは、福井県や石川県など北陸地方で作られる代表的な魚の糠漬けです。主にサバが使われることが多く、米ぬかに長期間漬け込んで発酵させることで、保存性を高めるとともに、独特の風味が生まれます。保存性が高いため、昔から冬の貴重な保存食として親しまれてきました。
- 作り方: サバを塩漬けにし、十分に水分を抜いてから、米ぬかに漬け込み、さらに1~2年ほど発酵させます。長期間発酵させるため、強い風味と旨味が特徴です。
- 特徴的な風味: へしこは、しっかりとした塩味と発酵による酸味があり、濃厚な旨味が特徴です。塩辛さの中に深いコクがあり、炙って食べることが一般的です。炙ることで香ばしさが増し、酒の肴やご飯のお供として非常に人気があります。
サバのへしこ(京都府)
- 概要: 京都府の舞鶴などでは、福井県と同様にサバを使った「へしこ」が作られています。特に内陸部である京都では、かつて海産物を保存するための手段として発展しました。
- 特徴: 塩気が強めのへしこは、京都の料理でよく使われる薄味の料理と合わせることで、その塩味と発酵の風味を引き立たせます。また、京料理の一品として、薄く切って茶漬けにすることもあります。
いわしの糠漬け(千葉県九十九里地域)
- 概要: 千葉県九十九里浜周辺では、イワシの糠漬けが昔から作られています。この地域では、イワシが豊富に獲れたため、保存食として糠漬けが発展しました。
- 作り方: イワシを塩漬けにし、しばらく塩抜きした後、糠床に漬け込んで数週間発酵させます。比較的短期間で発酵が進むため、へしこと比べると酸味は穏やかですが、イワシの脂の旨味が糠に染み込みます。
- 特徴的な風味: イワシの脂が糠漬けによってコクと風味を増し、焼くと香ばしさが引き立ちます。脂の乗ったイワシと糠の風味の組み合わせが絶妙で、ご飯のおかずとして親しまれています。
ハタハタの糠漬け(秋田県:しょっつる漬け)
- 概要: 秋田県では、ハタハタ(日本海沿岸で多く獲れる魚)を使った「しょっつる漬け」や「ハタハタの糠漬け」が伝統的に作られています。しょっつる漬けは、発酵調味料であるしょっつるを使ったものですが、糠漬けも非常に人気があります。
- 作り方: ハタハタを塩漬けした後、米ぬかや塩、しょっつる(魚醤)を加えた糠床に漬け込み、数週間発酵させます。発酵によって旨味と酸味が加わり、魚本来の味が引き立ちます。
- 特徴的な風味: 発酵の進んだハタハタの糠漬けは、濃厚な旨味と酸味が特徴です。脂の乗ったハタハタの味わいに、米ぬかの風味が調和して深みのある味が楽しめます。
イカの糠漬け(青森県)
- 概要: 青森県の一部地域では、イカを使った糠漬けが作られています。イカは魚と比べると水分が多く、糠漬けにすることでその旨味が凝縮されます。特にスルメイカなどを使った糠漬けが有名です。
- 作り方: イカを塩漬けにして水分を抜き、糠床に漬け込みます。数日から1週間程度漬け込み、発酵が進んだところで取り出します。イカは魚に比べて発酵が速いので、比較的短期間で仕上がります。
- 特徴的な風味: イカの甘みと糠の風味が融合し、口当たりの良い味わいに仕上がります。程よい塩味と旨味が口に広がり、特にご飯やお酒と相性が良いです。
ニシンの糠漬け(北海道)
- 概要: 北海道では、ニシンの糠漬けが昔から作られています。ニシンは北海道沿岸で豊富に獲れる魚であり、冷涼な気候に適した保存食として糠漬けが普及しました。
- 作り方: ニシンを塩漬けした後、糠床に漬け込み、長期間発酵させます。ニシンは脂が乗っているため、糠漬けにすることでその旨味がしっかりと引き出されます。
- 特徴的な風味: ニシンの糠漬けは濃厚な風味と旨味が特徴です。特に脂の乗ったニシンは発酵によってより一層味が深まり、焼いたり煮たりして食べるのが一般的です。寒い地方での保存食として、冬の味覚の一つです。
ブリの糠漬け(富山県)
特徴的な風味: ブリの脂の甘みと、米ぬかの風味がよく合います。特に焼くと糠の香ばしさがブリの脂と相まって、豊かな風味が広がります。
概要: 富山県では、冬の魚として有名なブリを使った糠漬けがあります。富山湾で獲れるブリは「寒ブリ」として知られ、糠漬けにすることで保存しながら、発酵による深い味わいを楽しむことができます。
作り方: ブリを塩漬けにし、糠床に漬け込んで発酵させます。比較的脂が多い魚なので、短期間で旨味が引き出されます。
日本各地で作られている魚の糠漬けは、それぞれの地域で獲れる魚や発酵の技術を活かした独自の風味を持っています。
発酵による旨味の深まり、酸味や塩味のバランス、そして糠の風味が絶妙に魚に移ることで、地域ごとの特色が生まれています。
どの地域の糠漬けも、その土地ならではの気候や風土、文化が反映されており、長い歴史を持つ保存食として現代でも親しまれています。
魚の糠漬けの分布表
地域 | 魚の種類 | 糠漬けの名称・特徴 |
---|---|---|
福井県、石川県 | サバ、イワシ | へしこ:サバを米ぬかに長期間漬け込んだ保存食。強い塩味と発酵による濃厚な風味が特徴。 |
京都府 | サバ | サバのへしこ:内陸部での貴重な保存食。京料理に合わせて、へしこを薄く切ってお茶漬けにすることも。 |
千葉県(九十九里) | イワシ | イワシの糠漬け:脂の乗ったイワシを糠に漬け込み、短期間発酵させたもの。香ばしく焼いて食べるのが一般的。 |
秋田県 | ハタハタ | ハタハタの糠漬け:米ぬかとしょっつるで漬け込む。濃厚な旨味と酸味が特徴。 |
青森県 | スルメイカ | イカの糠漬け:イカの甘みと米ぬかの風味が融合。短期間で発酵し、焼いて食べると風味が増す。 |
北海道 | ニシン | ニシンの糠漬け:寒冷な気候に適した保存食。脂の乗ったニシンを長期間発酵させ、濃厚な味わいに。 |
富山県 | ブリ | ブリの糠漬け:脂の乗った寒ブリを使用。米ぬかの風味とブリの甘みが絶妙に合わさる。焼いて食べるのが一般的。 |
石川県(能登) | イワシ、サバ | イワシやサバの糠漬け:塩味が効いた保存食。短期間漬け込んで、酸味と塩味のバランスを楽しむ。 |
日本各地の代表的な魚の糠漬けを地域ごとに整理したものです。
各地域の魚の種類や糠漬けの特徴が、その土地の気候や漁業、食文化に強く結びついています。
地域ごとに漬け込む期間や使用する材料も異なり、風味や保存方法が独特です。
いかがでしたか?
もう一つ珍しい糠漬けをお伝えします。
それは、フグの子の糠漬けです。

「フグの子の糠漬け(ふぐのこのぬかづけ)」は、フグの卵巣を塩漬けした後、糠(ぬか)に漬け込んで発酵させた食品です。これは主に石川県や富山県など北陸地方で作られている珍味の一つで、非常に希少な食品です。フグの卵巣には強い毒(テトロドトキシン)が含まれているため、通常は食べられませんが、この漬物は特別な製法により毒性が失われ、安全に食べられるようになります。
製造工程には非常に高い技術が求められ、塩と糠で長期間発酵させることで毒が除去され、独特の風味が生まれます。この発酵には、最低でも1年以上かかることが一般的です。完成したフグの子の糠漬けは、塩辛く濃厚な味わいと発酵食品特有の深い風味を持ち、日本酒や焼酎とよく合います。
ただし、この食品は非常に特殊な製法で作られているため、製造・販売には国の許可が必要です。また、フグ自体も調理には資格が求められるため、扱いには非常に注意が必要です。
興味があれば、石川県や富山県の特産品として購入できることがあるので、ぜひ現地の食文化を楽しんでみてはいかがでしょうか。